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1986/03/04
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189
何気に旅行先。ぽちぽちとSS打っていたので夜帰宅した頃には載せられそうです。リュカ×ナナミです。

帰宅しました。と言うことで続きにリュカ×ナナミSSを置きました。
ノーマルルート?の6章あたりな設定でほのぼのです。

 


お互い様


最初は4人で始まった旅も今では随分と大所帯になっている。今回滞在する事になったのは人の手を離れて幾年もたったと思われる廃墟で、もれなく瓦礫除きや吹き掃除の仕事がついてきた。作業の手を止め辺りを見回す。マリンと話をしていたナナミが立ち上がり、ちょうどどこかへ行こうとしている所だった。早速その姿を追おうと一歩足を踏み出してみるも、茶化すような声に呼び止められ渋々振り返った。

「ちょいとリュカ。こっちを手伝ってくれないかい?誰かさんを探している所悪いけどさ」

シャルルにはこんな風にからかわれてばかりだ。機嫌悪そうな顔をしてみせたけれど、ほとんど効果がないのはわかっている。

「何をすれば良いんだ?」
「ふふ。良い子だ。向こうの道がふさがっているから、瓦礫を除けといて欲しいんじゃよ」
「わかった」

言われた通りに道を作っていると、今度は別の声がリュカの名前を呼んだ。甘えた声で服の裾を引っ張るのはユンだ。

「リュカ。荷物を運ぶの手伝って」

頷いてユンの後を追う。戸の開いた部屋を通り際に覗くと、ナナミがエディックやなんかに囲まれながら作業をしているのが見えた。本当はその間に割り込みたい気分だったけれど、ユンの頼み事も放っておくわけにはいかない。上の空で荷物を運んでいたらつまずきそうになり、もう、と大人ぶった口調のユンにたしなめられた。二人して顔を見合わせて笑う。

「はい。これでおしまいだよ」
「俺が持って行くよ」

最後の荷物を受け取り、再び部屋と部屋の間を移動しようとした。その時、何やら視線を感じてそちらへ顔を向ける。相手は気づかれる事を想定していなかったらしく、元より大きな目をより一層大きくして動きを止めた。どうやら今は一人でいるらしい。しかし、リュカが笑顔を向けるとさっと視線をそらされてしまった。え、と情けない声が漏れる。目的地とは反対なのもお構いなしで、リュカはナナミの元へ急いだ。

「ナナミ。どうした?何かあったのか?」
「え?何もないよ」
「本当に?」

俯いた顔を覗き込もうとするも、荷物が邪魔で思うようにいかない。その拍子に木箱がひとつ転がって床に落ちた。しゃがもうとするのをナナミが制し、落ちた木箱を拾い上げる。リュカはそれをまた上に乗せるように言ったけれど、ナナミは乗せるどころか他の荷物まで取り上げようとした。

「私も手伝うよ」
「いいよ。これくらい」

ナナミが手を出せないように身体の向きを変え、頑なに言い張る。ところが、ナナミも手に持った荷物を返そうとしない。

「でも、もう私の作業は終わったから。やっぱり手伝うよ」
「いいって」

少し強い口調になってしまったと思い咄嗟に謝る。けれど、ナナミにこんな物を持たせるわけにはいかないのだ。そこは譲る事ができない、と気を取り直してナナミの顔を見る。予想外の表情が待ち受けていてリュカは言葉を無くした。

「ナナミ?」
「最近リュカと話す機会が減ってたから、一緒に何かしたいなと思ったんだけど……ダメ?」

可愛らしく小首を傾げる。仕草も台詞もリュカの顔を真っ赤にさせるには十分すぎて、頭がくらりとするくらいだった。

「い、いい」
「どっち?」
「……一緒に、ってこと。でも、他のはいいから」

ナナミはまだまだ納得いかないと言う顔をしている。重たい物を持たせたくないと言う気持ちはあったけれど、今ではそれ以上の理由ができてしまっていた。

「これがなかったら、何してるかわかんないし……」
「どう言う意味?」
「今荷物がなかったら、抱きしめたくて絶対我慢できなかったから」
「え……」

今度はナナミの頬がぽうっと赤く染まっていく。

「な、何言ってるのリュカ!」
「うわ、ナナミ荷物崩れる!」

見かけによらず力強い一発が腕にじんじんと響いた。途端に情けない気持ちでいっぱいになるのに、心配して寄り添うナナミを見るとまた頬が緩んでしまうのだ。
 


  
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